マリオネット★クライシス
――いえ、わたし、女優に専念したいんです。時間に余裕ができれば、今より仕事の選択肢広がると思うし。
ムキになって言っちゃったのは、反発したくなったからかもしれない。
先生のカオが、「白鳥に化けた夢を忘れられないアヒルの子」って言ってるように見えたから。
白状すると……オーディションに落ちるたびに落ち込むし、いわゆるチョイ役ばかりのBランク女優のまま続けるのが正解なのか、自分でもわからなくなる時がある。
頑張れば必ず報われるって世界じゃない上、わたしよりずっと可愛い新人が、毎年うじゃうじゃデビューするしね。
一見華やかそうに見えるかもしれないけど、実際はずっとシビアでしんどい。
ただ、この仕事は幼いころからずっと生活の中心で、わたしのすべてで……。
赤ちゃんモデルでデビューしてから今までで、2度、一時的に仕事できなかった期間がある。もう一度カメラの前に立つことができた時の安堵感は、今でも忘れられない。
女優の仕事を取ったら自分には何もないんだって、強く意識した。
わたしにはこれしかないんだって。
だから、なんとかしがみつくしかない。
――……さんて、ほんと、フツーなんだね。
――ていうか、陰キャ? もっとすごい子かと思ってた。
続けたいか続けられるかじゃなく、続けなきゃいけないんだ。
口の中で呪文みたいに唱えて、パリピ女子たちから目を逸らす。
青春が何よ、友達が何よ、
別に全然そんなもの、惜しくもなんとも――……
「ねえねえ彼女ぉ、一人?」