マリオネット★クライシス

思考にズカズカ土足で入り込んできたのは、へらへらって笑い交じりの軽そうな声だった。

「はい?」

視線を移すと、隣のテーブルから派手なヤンキー風の男が2人、こっちをニヤニヤ見ていて、げ、って小さく声が漏れちゃった。

「ヒマだったら俺たちとカラオケ行かね? 奢るし」

「結構です。友達と一緒なので」

きっぱり断ったつもりだったんだけど、なぜか彼らは勝手にテーブルを移動してきて、わたしを取り囲むように座ってしまう。
やだ、めんどくさ……。

「じゃあさじゃあさ、その子も一緒に遊ぼうよ! いいだろ?」

「いや無理です。友達って男なので」
しつこいな!

「えぇ、男ぉ? もしかして彼氏?」
「それともまだオトモダチ止まり? 友達以上恋人未満、的な?」

レジが混んでるのか、ジェイはまだ戻ってこない。
席を立つわけにもいかないし……あぁもう、鬱陶しい。

こういう時はどうすればいいんだろう?
ナンパされるなんて初めてで……まぁ普段は猪熊さんが一緒だからな。

「そのお友達より、俺たちの方がいい男かもよ?」
「お試し、してみない? 絶対退屈させないし」

ウザい。
ほんとにウザい。

いっそコワイお姉さんでも演じてみようか。

前に観た任侠映画を思い出しながら考えてはみるものの、騒ぎが大きくなっちゃったらと思うと……

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