マリオネット★クライシス
「俳優、役者、アクター」
わたしが繰り返すと、「意味はわかるけど」と頷く。
「なんで?」
「なんでって、あの……さっき、守ってくれた時ほんとにカッコよかったから。みんな目が釘付けだったし。演技なんて思えないくらい、真に迫ってた」
一日限定の偽カノのためにあんなお芝居ができるなら、カメラの前でだって素晴らしい表情が作れるはず。完全にわたしはオマケって感じだったよ。
自虐的に付け加え肩をすくめるわたしへ、けれど注がれたのはなぜか複雑そうな眼差しだった。
「……あのさ、ユウってホントに女優?」
「は? あ、アクトレス、ですけど?」
どうしてそんな疑問形なの、ってちょっとムッ。
「プロならわかるだろ。演技か本気かくらい」
「え……だから、わたしでもわからないからすごいって言ってるの。それだけ迫真の演技だったってことでしょ」
思いっきり褒めてるのに、相手は無言でハンバーガーをパクッ、もぐもぐ。
そして、(なぜか)呆れたようにつぶやいた。
「……ユウってなんかズレてるって、言われない?」
ずれ、てる?
「違うよ、これカツラじゃないよ? ちゃんと静さんが地毛で結い上げてくれたんだから」
なんで突然髪の話になるのよ、って眉を寄せたら、ゴホっと目の前でむせ出すイケメン。結構貴重な映像かも?
「ゴホッケホッ……も、もう、いい……」
笑ってるのか泣いてるのかわからないカオで言って、わたしへハンバーガーを押し付けた。
「とにかく、食べよう。腹減ってるんだろ?」
「う、うん?」
なんだか腑に落ちないやりとりだったけど……まぁ、誘惑には勝てない。
食欲に負けたわたしは、ありがたくそれを受け取った。