マリオネット★クライシス

抽出が終わったことを知らせるランプが灯り、カップをマシンから取り出しつつ、贅沢な悩みねと肩をすくめた。

(来年くらい、もう少し大きなところに移転できるかしら)

シンプルなソファセットや窓辺のささやかな観葉植物を眺めて皮算用し、ニンマリとカーブさせた唇をカップへつけた。

20代の若さで父親からこの芸能プロダクションを託された時、そのプレッシャーに押しつぶされそうになったことを思い返す。
モデルの仕事は順調だったし、未練もあった。

今はもう、遠い昔のことのように思えるが……まだあれから3年と経っていない。

人間、やればなんとかなるものである。


【……大量の覚せい剤が発見されたのは、先週、横浜港に入港した外国籍のコンテナ船です】

ちょうどニュースが始まったところだったらしい。
テレビの中から読み上げる声に興味を引かれて顔を上げる。

画面は、覚せい剤らしき白い粉が詰まった袋がズラリと床に並ぶ様子を映していた。

【船を所有する外資系の大手商社によりますと、船内の点検で乗組員が発見したとのことです。捜査関係者は、洋上で別の船から積み込まれたのではないかとみており、背後に大きな組織が関わっている可能性も捨てきれないとして……】

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