マリオネット★クライシス
お、同じ……こと、って?
瞬きつつ彼の長い指が示した方を追えば、そこにはヒナタ君と彼女が一本のポテトを両側から食べ合うシーンが……って、あれ!?
「やりたそうな顔、してたから」
は!?
「やややや、なにそれっ! そんな顔してないっ!」
「はい、あーん」
ひと際長いポテトを目の前に突き出され、慌てて顎を引く。
「や、やらないってば」
「なんで? 恋人同士だろ、オレたち」
「ほ本物じゃないし! なんでそんなことしなきゃいけないの!?」
「相手が“ヒナタ君”だったらできる?」
「な、な、そんなっ……」
なんか、対抗してる?
「芝居だと思えばいいじゃん。アクトレスの名前が泣くぜ? こんな簡単な演技もできないのか?」
「えぇえ……」
意味わかんない、って混乱する間にも、ポテトはゆっくり近づいてくる。
「ほら、ユウ。口開けて」
強請る様に微笑まれ、とくんと鼓動が高く鳴る。
そんな、本気で誘ってるみたいなカオ、しないでよ。
ほんとに演技上手いんだから……。
追い詰められたわたしは、とりあえず一口食べて見せれば満足するかなって、パパっと周囲をチェック。
誰もこっちを注目してないことを確かめてから、しぶしぶ口を開く。
まさかキスまではしないよねって心臓をバクバクさせながら、それでも覚悟を決めて、近づいてくるポテトを待ち受けた――ら。
数センチのところまでやってきたポテトは、なんと!
直前でひょいっとUターン。
一瞬のうちにジェイの口へ消えてしまった。