マリオネット★クライシス
<でもだからって、彼自身が裏切り者だなんて発想、ちょっと飛びすぎじゃないのかな>
画面が騒がしくなった。
《私もそう思う。もう少し慎重になるべきだ》
《その通りだ。犯人探しに躍起になるあまり、結果を焦りすぎているように思う》
《いやいや、じゃあ彼の口座に振り込まれたあの金はなんだ?》
《しかも、隠し口座だったっていうじゃないか。それはどう説明する?》
《18歳のお小遣い、って額じゃないぞ?》
<ジェイは、普通の18歳じゃない>
金髪の男が口を挟む。
<株とかFXとか、そんな感じかもしれないじゃないか。僕だって、学生時代には散々稼いだよ>
面々は押し黙り、様子を伺うようにそれぞれの視線を動かした。
すると――ラフな休日ファッションのメンバーが多い中、ただ一人きっちりと高級スーツを着こなした男が画面の向こう、ゆったりとテーブルの上で手を組んだ。
《――じゃあなぜ》
ハスキーな低音に、ハッと場が引き締まる。
《偽の情報をでっちあげてまで、こそこそ姿を消した? こんな状況下だ、疑われても文句は言えまい》
金髪の男は一瞬怯んだが、すぐに挑戦的な視線を画面へ注いだ。
<それは、本人に直接聞くことにするよ。見つかったらね。もうちょっと早く連絡をもらってたら、空港で捕まえられたんだけど>