子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
狐の嫁入り

 本当は、和装での結婚式が夢だった。

 サイズが合わないウエディングドレスは、罪の重さを知らしめるように私の身体にまとわりついていた。

 雨音が鬱々と響き、式の前に『狐の嫁入りのようだ』と嗤った妹の声をよみがえらせる。

 遠く近く聞こえる雨は、これから訪れるであろうつらい日々に向かう足音のようでもあった。

 ベールで顔を覆い、新郎のもとへと一歩ずつ足を踏み進めていく。

 左右には両家の親族と友人や職場の人間といった招待客が、晴れやかな結婚を祝おうと集まっていた。

 だけどそこに私の友人と呼べる人はいない。そんな素敵な存在は私の人生に存在しないからだ。

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