子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 ふたりが揃うと、和室にいるのも相まって日本人形が並んでいるように見える。私だけがそぐわず、いたたまれない気持ちになった。

 今日もまた、私は母の視線に耐えられずうつむく。

 同じ宝来の娘でありながら、長女の私は広い家の掃除をし、妹は老舗の和菓子と薫り高い緑茶で優雅なひと時を過ごす。もう二十年近く味わってきた日常だ。

 二十五歳になっても私は、この家の家族として許されていない。

「その、ご用はなんでしょうか?」

 振り絞るように尋ねると、くすりと笑う声がした。弥子だ。

「琴葉にいいものを見せてあげようと思って。結婚の申し出が来たの」

< 10 / 381 >

この作品をシェア

pagetop