子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「本当に優しい男なら、こんな親の真実なんて妻には話さない」

「妻に対して誠実なんだな、と私は思いました」

 つい、得体の知れないものを見る目で彼女を見てしまった。

 俺がなにを言っても、彼女はプラスに捉えそうだ。

 かつて絆創膏を差し出したからか? それとも、純粋にそういう性格なのか?

 ただ、非常に居心地が悪い。

 同時にどうして自分がこんな話を彼女にしてしまったのか、わかった気がした。

 宝来家から聞いている話と、俺が目にする彼女の姿と。どうにも噛み合わない宝来琴葉という人間が、俺の話を聞いてどんな反応をするのか見てみたかったのだ。

「おまえに俺のなにがわかるんだ」

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