子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
罪は甘いもの

 保名さんの取引先の社長がパーティーを開くこととなり、私も彼の妻として参加を命じられた。

 パーティードレスか着物か好きな方を選べばいいと言われ、私が選んだのは実家で見慣れた着物だった。ドレスが自分に似合うとは思わない、というのも大きい。

 彼はひとりで着付けをした私に驚いたようだったが、亡き実母が教えてくれたことの中で唯一覚えているのがこれである。幼い頃だったのに、よく忘れずにいるものだと自分でも感心する。

 妻の出席が望まれているのならと夫婦円満を示す蝶の柄を選び、色は重すぎないようクリーム色に近い薄い黄色を選んだ。紋の数はひとつ。華やかながらも慎ましい、美しい訪問着だ。

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