子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 創業百年を超える歴史を持つ我が家より遥かに古い久黒庵は、明治時代から続く名店だ。外国の重鎮たちを招く主要国首脳会議にて名物の栗餅を供したのも、そう昔の話ではない。

 葛木保名はその葛木家の後継ぎである。とは言っても、彼の父のように和菓子を作るのではなく、販売や流通を専門として仕事をしているとのことだった。

 彼が事業に手を入れてからは、ネット販売や全国で行われる物産展への参加など、久黒庵の名を飛躍的に高め、売り上げを桁違いに伸ばしているという。

 名家の御曹司がなぜ我が家に縁談の申し出を、と疑問には思わなかった。

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