子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 会場は明るく、賑やかだった。身内だけのものだと聞いていたが、軽く百人ほどは集まっているように見える。

 思っていたよりも和装が見受けられるのは、保名さんの仕事も和に関係しているからだろうか。

 立食形式らしく、広い会場の奥に並べられた料理も和食が多い。一番端には和菓子があった。久黒庵のものかもしれない。

「余計なことはなにも話さなくていいから、おとなしく笑っててくれ」

「はい、わかりました」

 保名さんが私を連れ立ってエスコートしてくれる。

 夢を見ているみたいだ。彼の隣を歩くことが許されているなんて。

「おお、葛木くん! 急な誘いだったのに、都合を付けてくれてありがとう」

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