子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 声をかけてきたのは初老の男性だ。恰幅がよく、隣に立つ女性もふくよかで温かな雰囲気をしている。

「いつもお世話になっております。こちらが妻の琴葉です」

 紹介され、髪が崩れないようゆったりとお辞儀をする。

「主人がお世話になっております。葛木琴葉と申します」

「いや、突然結婚したというからどんなお嬢さんかと思ったが、着物の似合う美人さんじゃないか。保名くん、素敵なお嫁さんをもらったね」

 親しみのある眼差しで褒められ、誰に対しての言葉なのかと目を瞬かせてしまった。

 はにかむだけの私に代わり、保名さんが愛想のいい笑みを浮かべる。

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