子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 歴史だけならば、呉服屋の宝来家も葛木家には劣らない。古い考えがまだ残る両家において、婚姻による結びつきを強めたいと考えるのは自然だった。

 手紙をめくると、二枚目には写真があった。

 和服に身を包んだ容姿端麗な男性こそ、保名さんだろう。

 私の三つ上だから、まだ二十八歳のはずだ。それなのに既に大人の男性として成熟した雰囲気を醸し出しており、三十を過ぎていると言っても違和感がない。それでいて老成しているようには見えないから不思議なものだ。

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