子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 写真の中で笑みを浮かべていないせいか、表情に乏しい印象を受ける。髪の短さもあって全体的にすっきりとした顔立ちだった。髪も目も和装にふさわしいだけの黒をしているのに、重く見えない。

 こんな素敵な男性として成長していたのか、と写真をそっと撫でる。

 私を見つめているはずもないのに、こちらへ向けられた瞳から目を逸らせない。

「保名さんがこんなにかっこいい人だなんて知らなかったよね」

 弥子が声を弾ませて言う。

「琴葉は会ったことないだろうけど。これからは会えるよ」

 写真から顔を上げて弥子に目を向けると、彼女は母によく似た嘲笑を浮かべた。

「私の旦那様として、だけどね」

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