子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 とても誠実な人なのだな、と許す許さない以前に思ったのを覚えている。

 普通なら、誤解されるような私が悪い、そう言われるだけの理由がお前にもあるんじゃないのか、と責めてもおかしくないところだ。

 だけど彼は自分の過ちを認め、私の心に寄り添い、謝ってくれた。

 つらい思いをさせてすまなかったと何度も言われ、急に肩の力が抜けて泣きそうになったのは彼に言っていない。

 意外にも保名さんは私をよく見ていたらしい。なぜいつも不安げなのか、すぐうつむく理由はなんなのかもわかったと言っていた。

 保名さんがダイニングテーブルに買ってきた夕飯を並べる。

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