子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 いい加減、私が用意できればいいのだけれど、まだ料理の腕は半人前以下だ。

 でも、保名さんが用意してくれたレシピ本のおかげで、どんなふうにやればいいのかはわかり始めた。いずれ彼に手料理を振る舞う日も来るだろう。

 お茶を出し、箸や取り皿を用意してから席につく。保名さんは私の正面に座った。

「この間、里芋を煮たのが食べたいって言ってただろ。だから買ってきた」

「ありがとう。でもちょっと量が少ないような……? 保名さんの分はどうしたの?」

「里芋はあんまり好きじゃない。芋のくせにぬるぬるしてるから」

 顔をしかめながら言われ、つい笑ってしまう。

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