子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 保名さんは、今までに見せなかった一面をよく見せてくれるようになった。おかげで、彼の好きなものや苦手なもの、なにを喜ぶのかをだんだん覚え始めた。

 彼もまた甘党で、洋菓子よりは和菓子が好き。粒あん派ではなくこしあん派なのは私と同じだ。

「このぬるぬるがおいしいのに」

「そんなのおまえだけだ」

 ふん、と鼻を鳴らすと、保名さんは里芋の煮物と違い、倍以上の量がある肉じゃがを自分の皿に取り分けた。たくさん食べたいからたくさん買う、という彼のスタイルは子どもっぽさも感じて微笑ましい。

「今日はどこか出かけたのか?」

「うん、スーパーで買い物をしてみたの。カードじゃなくて現金だけど」

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