子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 保名さんの取り繕わない態度は、ようやく夫婦として歩み始められたように感じられてうれしい。

 そう、保名さんは私と夫婦生活を続けると言ってくれたのだ。

 離婚すれば実家に戻されるだろうし、そうなった時に今まで以上のひどい扱いを受けるかもしれない。それがわかっているのに見て見ぬふりはできないと言ってくれた保名さんに、また恋をした。

 雑談しながら夕飯を食べ終え、余力のあるお腹にお待ちかねの栗餅を詰め込む時間がやってくる。

 私が濃い目に淹れたお茶を用意すると、保名さんは湯呑に顔を寄せてから微笑した。

「料理は下手なくせに、お茶を淹れるのはうまいよな」

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