子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「そうかな? 保名さんがおいしい和菓子をいつも持ってきてくれるおかげかもしれないね。だって、私の淹れたお茶でお菓子の味を台無しにはできないもの」

「その程度で台無しになるようなもんじゃないけどな」

 ソファに座り、横に並んで一緒に栗餅を食べる。

 ずっと食べたかったのもあり、少し緊張しながら口に運んだ。

「……おいしい」

 口の中で栗のほっくりとした甘みがとろけた瞬間、思わず感想をこぼしていた。

 甘露煮だというのに、糖蜜のまとわりつくような甘さは一切ない。栗本来の甘みを引き出すような上品な味は、舌先を幸福で包み込んで恍惚とした喜びを与えてくれる。

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