子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 やや歯ごたえのある栗と違い、求肥の部分は溶けたのかと思うほど柔らかい。なぜ、手で持った時点で形が崩れないのか不思議に感じるほどの柔らかさだ。

 求肥もほのかに甘く、濃い緑茶を引き立てる。

 甘さと苦みが調和したところに、口内で崩れた栗が別の甘みを広げ、飲み込むのがもったいないほどの多幸感に心を支配された。

 夕飯を食べた後だが、あと十個は余裕で食べてしまえそうだ。

 うっとりと快感の余韻に浸っていると、保名さんがくすくすと声を上げて笑った。

「そんなにうまかったのか?」

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