子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 和菓子の入った箱を押し付けられ、咄嗟に受け取る。

「おいしいから、保名さんと一緒に食べたいの」

 栗餅をひとつ手に取って包装を解くと、保名さんの口もとに近付けた。

「はい、どうぞ」

 ふたりで食べよう、という思い以外に深い意味のある行為ではなかった。

 だけど私を見た保名さんがぎょっとしたように目を見張り、はっきりと赤くなる。

 これはなにかおかしな真似をしたかもしれないと気付いた時には、保名さんに手首を掴まれていた。

「おまえ、平気な顔でそういうことをするよな」

「ごめんなさい。一緒に食べたくて……」

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