子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 彼が心を許してくれるようになったから、私もつい気が緩んで馴れ馴れしい態度を取ってしまう。

 不快に思っても仕方がないと謝ったのに、保名さんは掴んだ私の手首を自分の口もとに引き寄せ、ひと口サイズの栗餅を私の指ごと口に入れた。

「あっ、あのっ、それは私の指なんだけど……」

「和菓子屋の息子が、餅と指の区別もついてないと思ってるのか?」

 むっとした様子で言うと、保名さんは私の指の腹を舌でくすぐる。

 驚いて飛び退りそうになるも、掴まれたままでは逃げられない。

 保名さんにこんなことをされたのは、突発的に結ばれたあの夜以来だ。

< 216 / 381 >

この作品をシェア

pagetop