子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 彼は私を気遣って触れてこなかったし、私も特に気にしてはいなかったのだけれど。

 こうして触れられると急に身体が熱くなって、胸が騒ぐ。

 また保名さんに触れられたいという欲求が自分の中に生まれた。

「保名さん……」

「呼び捨てでいいって何度言ったら覚えるんだ」

 あ、と声を上げる間もなく、噛みつくように唇を塞がれた。

 驚いたのと同時に、肩を押されてソファの上へひっくり返る。

「気を遣ってやってるのに、人の理性を試すような真似ばっかりしやがって」

「ご、ごめんなさ――」

「謝るな」

 ぴしゃりと言うと、保名さんは手を緩めた。

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