子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 絡んでいた指が名残り惜しげに離れていった。

 せっかく与えられたぬくもりが離れる切なさに、小さく声を漏らしてしまう。

 このまま彼を見送ったら、次に触れてもらえるのはいつになるのだろう?

「行かないで……」

 呼び止めて保名さんの袖に指を引っかけると、彼がぎくりとした顔で私を見下ろした。

「離せ」

「資格とか、よくわからないよ。保名さんの好きにされたい」

「おまえな……。この状況で言うな、この状況で」

 保名さんは引こうとした身体を再び私に寄せ、焦がれるようにまた指を絡めた。

「……嫌じゃないのか。散々、俺に傷付けられたのに」

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