子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 こんな傷を見られたら、また叱られてしまうかもしれない。今度はどんないたずらをしようとして怪我をしたんだと、責められるかもしれない。

 泣きそうになりながら、どうにもできずに手を握り締めていると、不意に草を掻き分ける音が聞こえた。

 はっと顔を上げると同時に、現れた見知らぬ少年と目を合わせてしまった。

「だっ、誰……?」

「そっちこそ、こんなところでなにをしてるんだ?」

 声変わりしかけなのか、少し声がかすれている。きっと年上なのだ。

「どこかから迷い込んだのか? 勝手に入ったら怒られるぞ」

「違う……。私、その……」

 彼はいったい誰なのだろう。

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