子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「それ以上に保名さんにはたくさん救ってもらったよ」

 絆創膏を貼ってくれた彼の思いやりがなければ、きっと私は今日まで自分の心を守っていられなかった。

 私が私でいられたのも、実家での寂しい日々を耐えられたのも、全部保名さんのおかげだ。

 それまでの月日と比較したら、誤解した彼が私に冷たく接した期間なんて瞬きの間にも等しい。

「もう、キスはしてくれないの……?」

 彼がずっと触れなかった理由を知って、胸が締め付けられるように痛む。

「……本当に今まで男と付き合った経験がないんだよな?」

「えっ。どうして急に」

「魔性の女かもな、と思っただけだよ」

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