子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 苦笑した保名さんが触れるだけのキスをして、また溜息を吐く。

「いいのか? 俺なんかで」

「保名さんがいい」

 繋がっていない方の手を保名さんの首後ろに回して引き寄せる。

「保名さんじゃなきゃ嫌だよ」

「俺もおまえがいいな。結婚したのが妹の方じゃなくてよかった」

 きっと保名さんは事実を伝えただけだ。

 だけど弥子と比較して私の方がいいというたったひと言が、信じられないほど私の心を彼に惹きつけた。

 長い間、ずっと誰かに認められたくて、受け入れられたかった。

 そんな私の願いを叶えてくれたのが、初めて恋をした保名さんだなんて――。

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