子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 好き、と伝えたかったのに、また唇が重なった。

 あんなに柔らかかった栗餅よりも彼の唇は柔らかくて、とびきり甘い。

「キス……好き」

「おまえ、わざとやってるだろ」

 保名さんが私に口付けながら、片手で慌ただしく自身のシャツのボタンを外す。

 絡む吐息の合間に衣擦れが響いて、震えるほどぞくぞくした。

 ボタンを引きちぎってしまいかねない手の勢いに、彼の余裕のなさと私を求める気持ちを感じる。

 逸らされる方が多い視線は、今は瞬きしている時間も惜しいと言いたげに動かない。

「もっと、して」

「呼び捨てで呼べたらな」

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