子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 そこには母と弥子の姿があり、漆塗りのテーブルの前に並んで座っていた。

 向かい側には座布団が敷いてある。私にそこへ座れと言うのだろう。

 嫁いだ私はお客さんという扱いだから、親切に座布団を敷いてくれたのだろうか。などと呑気に考えていると、こちらから挨拶をする前に母が話し始めた。

「これまで代役ご苦労様。今日まで大変だったでしょうね」

 反射的に彼女の労いを受け入れそうになり、すぐ違和感に気付く。

「代役……?」

「そ、私の代役。自分がどうして結婚することになったか、忘れたわけじゃないよね?」

 言葉を引き継いだのは弥子だった。

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