子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 出て行けと言ったのに動かなかったから機嫌を損ねたのかもしれない。掴まれただけでこんなに痛いなら、叩かれたらもっと痛いだろう。

「ごめ……ごめんなさい……。いなくなるから、叩かないで……」

 震えながら言うと、彼はすぐに手を離してくれた。

 謝ったから許してくれたのかもしれない。

「なんで俺がおまえを叩かなくちゃいけな――おい、それどうしたんだ」

 離してくれたのに、またすぐ腕を掴まれる。

「や、やだ、ごめんなさい。ごめんなさい……っ」

「謝るなよ。怪我してるけど、大丈夫なのか?」

 先ほどよりは幾分優しくなった声で尋ねられ、彼の視線の先を見る。

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