子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 そこには葉で切ってしまい、血を滲ませた指があった。

「おまえ、絆創膏持ってないの?」

 怪我をしたから怒っているのだろうか。血でどこか汚すかもしれないから、顔をしかめているのか。

 質問に対して答えずにいると、食事を抜かれたり、服で隠れる場所をつねられたりする。それを知っていたから、怖いと思いながらも彼に答える。

「持ってない……」

「そのぐらい持ち歩けよ」

 呆れたように言ったかと思うと、彼は自身のズボンのポケットに手を入れた。そこからくしゃくしゃになった絆創膏を取り出し、呆然と見つめる私の指に巻き付ける。

「なんで……?」

「なんでって、怪我してるから」

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