子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
愛を教えてくれた人

 あの日以降、保名さんは離婚の話をしなかったし、実家からの連絡もなかった。

 彼は実家の件は任せろと言ってくれたが、少なくとも家にいる時に連絡を取り合ったり、私の父や母とどこかで会っている様子はない。

 私と保名さんの間で解決しているとはいえ、母と弥子は私の離婚と彼の再婚を諦めていないだろうと思っていたある日のことだった。

 私が実家に呼び出されてひと月ほど経った頃だろうか、保名さんが見事な意匠の着物を手に帰宅した。

「こんなに素晴らしい着物、どうしたの?」

「来月行われるイベントで着てくれ。正直、俺に着物の良し悪しはわからないんだが、おまえに一番似合いそうなのを選んだつもりだ」
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