子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「今までずっと我慢してた分を吐き出しただけだろ? 足りないくらいだ。今からでも戻って、罵ってきてやろうか?」

 首を左右に振ると、後頭部を保名さんの大きな手に掴まれた。

 顔を彼の広い胸に押し付けられて、今度は違う理由で息ができなくなる。

「よしよし。よく頑張ったな。帰ったらまた一緒に和菓子でも食おう。生クリーム大福は売り切れたからないが」

 保名さんが優しく言ってくれるせいで、家族の前では流れなかった涙があふれる。

「……っ、ふ……ぅっ……」

「……殴られて痛かったよな。止められなくて悪かった」

 保名さんはまったく悪くない。

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