子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 再度首を横に振って応えると、軽く顎を持ち上げられた。

 彼は引っぱたかれてまだじんじんと熱い私の頬に触れ、そっとキスをした。

「痛いの痛いの飛んでけ。……ほら、もう痛くないだろ。だから泣くなよ」

 この人はわかっていて、私にとって大切な意味を持つおまじないをかけてくれたのだろうか?

 保名さんの優しさが、暴言を吐いた罪悪感で痛む心に染みていく。

「おまえがあそこまで立ち向かえると思ってなかったよ。本当に頑張ったな」

「私がちゃんと振り切らなきゃ、これからも迷惑がかかると思ったの。それだけは絶対に嫌だったから……」

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