子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
幸せの足音
今日は私たちが結婚してちょうど一年目の記念日だった。
保名さんが予約した老舗の料亭で、ししおどしの小気味いい音を聞きながら今日までの出来事を振り返る。
あっという間の日々だったけれど、私はまだ彼を呼び捨てできていない。保名さんもときどき呼んでくれればいいと諦めたようだ。
「お蕎麦屋さんとのコラボ商品はもう決まったの?」
私が家族と絶縁宣言をしたあの日、イベントで親しくなった蕎麦屋の店長は前のめり気味にコラボの企画書を持ってきたのだ。
「再来月から店頭に並ぶぞ。どれも好評で最後まで難航したが、最終的に蕎麦団子になった」