子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「向こうみたいに週一で通ってるわけじゃないんだからいいだろ」

 外廊下と部屋を繋ぐ障子が開き、上品な着物に身を包んだ女将が現れる。

「ご歓談中失礼いたします。お飲み物はいかがなさいますか?」

「なににする?」

 保名さんは女将から渡された紙製のメニューを真っ先に私に渡してくれた。

「また辛口の日本酒にするか?」

 彼と結婚してから知ったが、私は意外とお酒がいける体質だった。

 淡麗辛口の日本酒とずんだ餅の組み合わせが特に気に入っている。

 今日の料亭もおいしい日本酒が揃っていると聞いていたけれど、メニューを保名さんに返しながら首を左右に振る。

< 303 / 381 >

この作品をシェア

pagetop