子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「ううん、お酒はやめておく。今日は緑茶で」

 保名さんは不思議そうにしながら、女将に緑茶と彼が好む超辛口の日本酒を頼む。

「珍しいな。具合でも悪いのか?」

 女将が部屋を出て行くなり、すぐ心配そうに尋ねられ、そっと自分のお腹に触れた。

「もしかしたら、もしかするかもしれなくて」

 非常に曖昧な言い方だったにもかかわらず、保名さんは私がお腹を撫でたこともあって意味を察したようだ。

「本当に? 最近、和菓子の好みが変わったのもまさか……」

「まだはっきりしたわけじゃないけど、たぶんそうだと思うの」

 はっきりと保名さんの顔に喜びと興奮が浮かんだ。

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