子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「子どもか。うれしいが……困ったな」

「えっ、困る?」

 喜んでいるように見えた保名さんから、思いがけない言葉が飛び出て不安になる。

 あれからお互いに一歳ずつ年を取ったが、私たちはまだどちらも三十歳に満たない。

 保名さんは後継ぎとしてますます忙しくなっているところだし、もしかしたら子どもを作るのはまだ早いと思っていたのだろうかと思ったけれど。

「今夜、ホテルを取ってたからな。子どもができたなら、おまえに無理はさせられないだろ」

 さらりと言われた言葉の意味を理解するまで少し時間がかかった。

 苦笑した保名さんと目が合った瞬間、ぶわっと一気に顔が熱くなる。

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