子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 私の判断が久黒庵の利益に関わるとなると、素直に味を楽しめなくなってしまう。

 ここで、私の選んだものを商品にする、と言わない保名さんの公平さが好きだ。とても誠実で真面目な人だと思う。プライベートでも、仕事においても。

「じゃあ、気楽に食べていいんだね」

「ああ。できれば簡単に感想を言ってくれると、うちの開発に伝えられてありがたい」

「わかった。あんまり上手なことは言えないかもしれないけど」

 十種類の水ようかんがつやつやときらめきながら私を見つめている。

 十は多いのでは、という思いが頭をよぎったが、水ようかんならするりと食べてしまえるだろう。

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