子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 舌の上に乗せた瞬間、とろっとあんこの甘さが溶けていく。

 ようかんという名前になぜ『水』がつくのか、このひと口だけで理解させられた。

 普通のようかんよりも水を多く含んでいるから、というのが理由らしいが、今食べたこしあんは多く含むどころの騒ぎではない。

 これはもう、飲み物だ。

「あと一滴、水を入れたらもう固まらなくなっちゃいそう。そのぐらい、いい意味で水っぽくておいしいね。普通、あんこってこってりしてるけど、これは全然くどくない。お茶で口の中の甘さを洗い流す必要がないくらい、水を感じるよ。やっぱり久黒庵だからいいお水を使ってるんだよね。おいしいなあ」

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