子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 不思議とさっぱりした味わいで、目を閉じると夏のさわやかな風が漂ってくるようだった。

 舌先にざらりと残る細かい茶の葉も楽しい。

「……ほんと、幸せそうに食うな」

 不意に保名さんの手が伸びてきて、私の頬をつつく。

「なにをしてる時よりも、和菓子を食ってる時が一番ここが緩む。餅を食ってるおまえの方が餅みたいだっていつも思ってた」

 彼の指が頬をなぞって、唇まで滑る。

 表面をくすぐる指は優しさと甘さに満ちていて、まるで敏感な場所を撫でられているかのように錯覚する。

「……っ、んむ」

 口の中に人差し指を軽く入れられ、舌に保名さんの指の腹が触れた。




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