子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 黒糖は不思議な味わいだった。黒蜜ほど濃厚ではないが、味が薄いと感じるわけではなく、しっかり独特の風味が残っている。和菓子を味わった、という満足感は小豆や抹茶に匹敵していた。

 ひそかに楽しみにしていた栗は、私の期待を裏切るどころか大幅に超えてきた。

 久黒庵で最も伝統のあるお菓子が栗餅なだけあって、水ようかんの中にある刻んだ栗の味は素晴らしい。

 魚卵にも似たつぶつぶ感が舌先で崩れると、甘露で煮詰めた栗の甘さがふわっと広がる。その驚きに感動している間に、甘さは水ようかんとともに喉の奥へ滑っていった。

「どうしよう、全部おいしくて困っちゃうね。みんな商品化してほしいくらい」

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