子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 だけど私はどうもしょうが焼きや、薬味としてのしょうがを想像してしまう。

 いったいどんな感じなのだろう、と意を決して口に含み、意外な味わいに瞬いた。

「全然辛味がないんだね。本当にしょうがの風味ってだけで。かといって甘い感じもしないかも? なんだろう、ちょうどいいっていうのが一番近い?」

 もともとしょうが自体がすっきりした味のものだからか、水ようかんとの相性はよかった。

 珍しさからひと口、もうひと口と繰り返しているうちに、あっという間になくなる。

「これ、全部の中で一番『もうひとつ食べたい味』かも」

「わかる。今まで身の回りになかった味だから、確かめたくなるんだよな」

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