子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「そう、そんな感じ」

 頷いた私の湯呑に、保名さんが新しくお茶を注いでくれる。

 ありがたくいただいたあとにほっと息を吐くと、急に満腹感が込み上げた。

「お腹いっぱいになっちゃった」

「よかったな」

 保名さんは苦笑すると、私の側に身を寄せる。

「もう触ってもいいか?」

「ん? どうして? 別にいいよ?」

「さっき睨んだだろ。だから遠慮してた」

「それは保名さんが口に指を入れるからでしょ?」

 保名さんの骨張った大きな手が、私の手をそっと包み込む。

 肌の感触を確かめるように撫でられ、甘えるように指を絡められた。

「保名さん」

「ん?」

< 368 / 381 >

この作品をシェア

pagetop