子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 急に落ち着かなくなって名前を呼ぶと、彼は私の手を握りながら顔を覗き込んだ。

「どうした?」

「……呼びたくなっただけ」

「名前を呼んだだけで照れるなよ」

 そう言われてから、自分の頬が熱くなっていること、そして彼と目を合わせられなくてうつむいていたことに気付く。

 握っていない方の保名さんの手が私の肩に回り、頬と同じく火照った耳をつまんだ。

「感想は俺の方でまとめて送っておくから」

「うん。これからまたお仕事?」

 保名さんはときどき家にも仕事を持ち込む。

 職人ではないからこそ、自宅でパソコンを使った作業ができるというわけだ。

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