子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 体温が低めな彼女が、こんなに身体を火照らせているのも俺のせい。

 肌が薄紅色に染まっているのも、しっとりと汗をにじませているのも、全部俺のせいだ。

 ふと、琴葉が鎖骨をなぞっていた俺の手を掴む。

 くすぐったかったのかと思ったが、彼女は掴んだ俺の手を自身の頬に引き寄せて笑った。

「私にも後で、痕を付けさせてね」

「その余裕がおまえに残ってたらな」

「じゃあ、今付けたい」

「付けられるなら好きにしていいぞ」

 主導権は渡さない、と再び彼女を追い詰め、責め立てる。

 琴葉は甘い嬌声を漏らしながら、何度も俺に『ずるい』『ひどい』と言った。

 ずるいのもひどいのもそっちの方だ。
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