子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
口付けは夢のぬくもり
久し振りに保名さんと話せたからといって、夫婦生活が進展するわけではなかった。
それどころか、以前にも増して保名さんから避けられている。
仕事から帰らない日も増えたが、私にはどうすることもできなかった。
そんなある日、ベランダで窓を磨いていた私は、電話の音に気付いて家の中へ戻った。
この家に来てから一度も鳴らなかった電話の様子に、ほんのり緊張を感じる。
仕事の話ならば保名さんのスマホにかけるだろうし、セールスかなにかだろうか。
手に汗が滲むのを感じつつ受話器を取ると、私が声を発するよりも早く向こうから話しかけられた。