子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 彼女が女性的な丸みを帯びた顔をしているのに対し、私は細面だ。常に柔和な笑み――私にとってはその笑みこそが恐ろしい――を浮かべている彼女と、他人と目を合わせないよううつむくのが癖になっている私とでは、雰囲気も大きく違う。

 彼女は以前、切れ長な私の目をキツネのようだと嗤った。髪色がこげ茶色なのも、土にまみれた獣のようだと。

 真っ黒な瞳は母も妹も私も同じだが、彼女たちのものはしっとりと艶めかしく濡れて色気を含んでいるのに、私はすぐに目を伏せるせいか、どこか陰鬱で暗い印象がある。顔を上げてまっすぐ見据えない限り、目もとが陰になって瞳が光を宿さないせいかもしれない。

< 9 / 381 >

この作品をシェア

pagetop