私だけを愛してくれますか?
お客様がひと段落した時を見計らって、蓮と華に招待状を渡す。
「蓮と華がいたから、今の私があると思う。本当にありがとう。これからもずっとよろしくね」
両親に挨拶するときもこんな気持ちになるのかな。
『今までお世話になりました』二人にはそんな気持ちがあった。
「なんか、娘を嫁に出す心境になるわ…」蓮は涙目でつぶやき、華は「ダイさん、美織のこと、よろしくお願いいたします」と生真面目に頭を下げた。
「今まで美織を支えてくれてありがとう。必ず幸せにする」
大さんは静かに微笑み、二人に約束してくれた。
蓮に見送られ、店を後にする。
十二月の街には、ちらちらと雪が降っていた。
「寒っ!」思わずブルっと震えると、大さんが優しく引き寄せてくれる。
「これからは、ずっと俺が温めてやる」大好きなバリトンが耳に響き、こめかみにチュッと口づけられた。
怖くて苦手な副社長が、甘々な婚約者になった。人生とはなんと不思議なものだろう。
背伸びをして「大好き!」と耳元でささやくと、「俺は愛してる」と不意打ちのキスが降ってきた。
やれやれ。
所構わず溺愛されるのも困ったものだ。
温かくて大きな体にギュっとしがみつく。
私は甘々で優しい旦那様と幸せになります。
**おしまい**